○みんなと一歩ずつ未来に向かっていく東員町子どもの権利条例

平成27年6月19日

条例第18号

前文

その昔、山上憶良やまのうえのおくらは、どんな宝も子に及ばないという意味の「しろがねくがねたまも何せむに、勝れる宝、子にしかめやも」という歌を詠みました。現代においても子どもたちが「社会の宝」であることに変わりません。しかし、現代は、「虐待」、「いじめ」、「交通事故」など、子どもたちをめぐる痛ましい出来事が後を絶ちません。

「社会の宝」である子どもたちが笑顔でいられるために、そして、より良く生きていくために私達はどうすればいいのでしょうか。

子どもの権利条例づくり推進子ども委員会の子どもたちは、次のように思いを綴りました。

『国で子どもの権利条約が定められている中で、東員町の条例をつくり、子どもが安心できるような町にするのと同時に、子どもと大人の関係を振り返り、良い町にしたいです。

ある先人は、何よりも子どもが大切という内容の短歌をつくりました。それに対して、私たちは、「子ども全員が大切にされてほしい」、「子どもが安心できる場所があってほしい」、「子ども全員がやさしい笑顔とあたたかい笑顔がつくれるようになってほしい」など思っています。お互いの意見を尊重し合える事も大切です。私たちのほかにも、このようなことを思っている人はたくさんいると思います。

今の保護者の中には、自分の子どもに対して、無責任な人がいます。自分の子どもの面倒を見ず、一人で遊びに行ったり、車の中においていったままどこかへ行ったりなど、無責任な行動が目立つようになってきました。自分の子どもを育てるのをやめたり、虐待をしたり、自分の子どもがいじめに関わっていても、何も考えない親がいたりします。例えば、東員町子どもの声アンケートの結果で、「家族に大切にされていると思いますか」という項目では、2,213人中の20人の人が思わないと回答しています。このような状態で、本当にいいのでしょうか。こんなことでは、今、深刻化しているいじめの問題が解決するはずがありません。

子ども同士のトラブルで、命を絶つ子も少なくありません。それを解決するためには、いじめや体罰、そして虐待をなくさなければいけません。いじめをすると、した方もされた方も傷つきます。子どもだからという理由で、残酷ないじめという状況を大人側の考えで片付けないでほしいです。

もちろん、子ども同士もがんばらないといけませんが、保護者は、それ以上にそんな子どもの手助けをできるようになってほしいです。そして、子どもが自ら行動できるようになるためには「やって」、「やれ」などではなく、「やってみよう」などあたたかく見守ってほしいです。

大人の勝手な行動で、子どもが傷ついているかもしれません。

町民一人ひとりが愛し愛されるように、もう一度自分を振り返ってみてはどうでしょう。

みんなが幸せに暮らせる町を創りあげましょう。〈子どもの権利条例づくり推進子ども委員会〉』

東員町では、そのような子どもたちの声を受け止め「子どもたちが愛し愛される町へ」を合い言葉に、子どもたちそれぞれが心豊かで、笑顔の絶えない元気な「東員っ子」が育つ環境を整え、そして子ども一人ひとりの人権が保障される社会の実現に全力を尽くすことを宣言して、この条例を定めます。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)の理念に基づき、町において、子どもの権利を保障し、子どもが安心し、楽しんで暮らせることを地域社会全体で支え合う仕組みを定めることにより、子どもたちが幸せに暮らせるまちづくりを進めることを目的とします。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれの当該各号の定めるところによります。

(1) 子ども 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第4条に定める「児童」をいいます。

(2) 保護者 児童福祉法第6条に定める「保護者」をいいます。

(3) 学校関係者等 保育、教育及び福祉の関係者その他子どもの育成に関連する分野に従事する者をいいます。

(4) 地域住民等 地域の住民、地域で活動を行う団体、町内の事業者等をいいます。

(5) 育ち・学ぶ施設 町内にある幼稚園、保育園、学校、放課後児童クラブ(学童保育所)等、子どもが育ち、学ぶために、通園し、通学し、通所し、又は入所する施設をいいます。

(基本理念)

第3条 この条例により子どもの権利を保障し、子どもが幸せに暮らせるまちづくりの実現は、次の考え方に基づきます。

(1) 子どもの幸せや子どもにとって最もよいことを第一に考えます。

(2) 子どもの年齢や発達に配慮します。

(3) 子どもと大人の相互理解を基本に、地域全体で取り組みます。

(4) 子ども自身の意志や力を大切にします。

第2章 人として大切な子どもの権利

(愛される権利)

第4条 子どもには、町全体で次のことをすることにより、ひとりの人間として尊重され、愛される権利があります。

(1) ありのままの自分を受け入れてもらうこと。

(2) 自分の気持ちや考え、個性や能力が認められ、大切にされること。

(守られる権利)

第5条 子どもは、安全で安心して生きていくために、次のことが保障されます。

(1) 命が守られること。

(2) あらゆる暴力や犯罪から心身ともに守られること。

(3) 健康に生活ができ、適切な医療が受けられること。

(4) あらゆる差別を受けないこと。

(5) 愛情と理解を持って育まれること。

(6) 平和な環境で生活できること。

(7) プライバシーや名誉が守られること。

(自分らしく生きる権利)

第6条 子どもは、次のことをすることができ、かつ、自分を大切にし、自分らしく生きる権利があります。

(1) ありのままの自分に自信をもって生きること。

(2) 発達に応じて、自分で自分のことを決めること。

(3) 夢や目標に向かってチャレンジできること。

(育つ権利)

第7条 子どもは、子どもらしく育つために、次のことが保障されます。

(1) 遊び、学び及び休息すること。

(2) 自然、歴史、文化、芸術及びスポーツに親しむこと。

(3) 家庭で食事や会話等の楽しい時間を過ごすこと。

(ともに生きる権利)

第8条 子どもは、次のことをすることができ、かつ、ほかの人とともに生きる権利があります。

(1) 性別、年齢、国籍、文化等が異なる人たちと、ふれ合い、受けとめ合い、育ち合い及び仲間になる機会が得られること。

(2) 子ども同士又は子どもと大人が支え合い、助け合う関係が大切にされること。

(意見を表明し、参加する権利)

第9条 子どもは、自分に関係することについて主体的に参加するために、次のことが保障されます。

(1) 自分の意見や考えを表明する機会が与えられること。

(2) 表明された意見や考えが尊重されること。

(3) 発達に応じて、活動の機会が用意され、意思決定に参加すること。

第3章 子どもの権利を保障するための責務

(権利の保障と尊重)

第10条 町は、子どもの権利を尊重し、かつ、あらゆる施策を通じてその保障に努めるものとします。

2 地域住民等は、子どもの権利の保障に努めるべき場において、その権利が保障されるよう町との協働に努めなければなりません。

3 学校関係者等は、町の施策に協力するよう努めるとともに、育ち・学ぶ施設における子どもの権利が保障されるよう努めなければなりません。

4 地域住民等は、子どもの権利の保障について町の施策に協力するよう努めなければなりません。

5 保護者は、子育てに第一の責任を持つものとして、子どもの気持ちを受け止め、子どもが安心して過ごせる環境づくりに努めなければなりません。

6 子どもは、自分自身の権利及び相手の権利を尊重しなければなりません。

第4章 子どもに関する施策

第1節 家庭等における子どもの権利の保障

(虐待の禁止並びに虐待からの救済及び回復等)

第11条 保護者及びその家族は、その養育する子どもに対し、虐待を行ってはなりません。

2 町は、虐待を受け、又は受ける可能性のある子どもに対し、児童相談所や警察等の関係機関との連携を図り、地域ぐるみですみやかな救済、解決及び回復に努めなければなりません。

3 町は、虐待の情報漏洩等2次被害のないよう努めなければなりません。

第2節 育ち・学ぶ施設における子どもの権利の保障

(育ち、学べる環境の整備)

第12条 学校関係者等は、子どもの権利の保障が図られるよう、育ち・学ぶ施設において子どもが自ら育ち、学べる環境の整備に努めなければなりません。

(安全管理の体制の整備等)

第13条 学校関係者等は、育ち・学ぶ施設の活動における子どもの安全を確保するため、災害の発生の防止に努めるとともに、災害が発生した場合にあっても被害の拡大を防げるよう関係機関、保護者、地域住民等との連携を図り、安全管理の体制の整備及びその維持に努めなければなりません。

2 学校関係者等は、子どもの自主的な活動が安全の下で保障されるよう、育ち・学ぶ施設及びその設備の整備等に配慮しなければなりません。

(体罰及び暴力の禁止等)

第14条 学校関係者等は、子どもに対し、いかなる理由をもっても、体罰という名の暴力を行ってはなりません。

2 体罰は、暴力そのものであり、身体的かつ精神的苦痛や人格をはずかしめる等の懲戒であり、決してしつけや教育的手段ではありません。

3 育ち・学ぶ施設の責任者は、必要に応じて子どもに対する体罰に関する調査を子どもが安心して回答できるように顧慮して実施し、その結果を東員町教育委員会(以下「教育委員会」という。)へ報告しなければなりません。

4 教育委員会は、子どもに対する体罰に係る事実を知ったとき、又はその相談を受けたときは、子どもの最善の利益を考慮し、関係する機関及び個人と連携し、必要な子どもの救済、解決及び回復に努めなければなりません。

(いじめの防止等)

第15条 学校関係者等は、子どもにとって重大な権利侵害であるいじめの防止に努めなければなりません。いじめの防止にあたっては、いじめの定義にとらわれず、子ども主体の判断を基本とします。

(東員町いじめ問題対策連絡協議会)

第16条 教育委員会は、根本的ないじめ防止等の対策を実効的に行うため、実情に応じ、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)第14条第1項の規定に基づき東員町いじめ問題対策連絡協議会(以下「協議会」という。)を設置します。

2 協議会には、専門的な知識及び経験を有する第三者等の参加を図り、もって公平性かつ中立性が確保されるよう努めなければなりません。

3 この条で定めるもののほか、協議会に関し必要な事項は、教育委員会が別に定めます。

(東員町いじめ問題調査委員会)

第17条 法第14条第3項の規定に基づき、教育委員会の付属機関として、協議会とは別に東員町いじめ問題調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設置します。

2 法第28条の規定に基づき教育委員会及び調査委員会は、重大事態に対し適切に対処し、かつ、事実関係を明確にするための調査結果をいじめを受けた子ども及びその保護者に提供しなければなりません。

3 法第30条第1項の規定に基づき教育委員会及び調査委員会は、重大事態が発生した旨を町長に報告しなければなりません。

4 この条で定めるもののほか、調査委員会に関し必要な事項は、教育委員会が別に定めます。

(東員町いじめ問題調査結果審議委員会)

第18条 法第30条第2項の規定に基づき町長は、いじめを受けた子ども及びその保護者からの救済の申立てを適切かつすみやかに処理するため、必要があると認めるときは、東員町いじめ問題調査結果審議委員会(以下「審議委員会」という。)を設置し、前条第3項の報告に対し再調査等を行います。

2 審議委員会の委員は、法令、医療、心理、福祉、子どもの人権、教育等に関して知識や経験のある者のうちから、町長が任命し、又は委嘱します。

3 この条で定めるもののほか、審議委員会に関し必要な事項は、町長が別に定めます。

第3節 地域における子どもの権利の保障

(子どもの育ちの場等としての地域)

第19条 地域は、子どもの育ちの場であり、家庭、育ち・学ぶ施設、文化、スポーツ施設等と一体となってその人間関係を豊かなものとする場であることを考慮し、町は、地域において子どもの権利の保障が図られるよう、子どもの活動が安全の下で行うことができる子育て及び教育の環境の向上を目指したまちづくりに努めるものとします。

(子どもの居場所)

第20条 町は、子どもに対する居場所の提供等の自主的な活動を行う地域住民等と連携を図り、その支援に努めるものとします。

(地域における子どもの活動)

第21条 町は、地域における子どもの活動を奨励するとともにその支援に努めるものとします。

(とういん子どもの権利の日等)

第22条 町は、この条例を子どもたちに広く知ってもらうため、11月20日を「とういん子どもの権利の日」と定め、その日を含む1週間を「子どもの権利を考える週間」とし、この週間に育ち・学ぶ施設において子どもの権利に関する授業等を行うよう努めます。

(広報)

第23条 町は、子どもの権利に関して地域住民等の理解を深めるため、その広報に努めるものとします。

(地域住民等の活動への支援と連携)

第24条 町は、子どもの権利の保障に努める地域住民等の活動に対し、その支援に努めるとともに、子どもの権利の保障に努める活動を行う者との連携を図るものとします。

第5章 子どもの参加

(子どもの参加の促進)

第25条 町は、子どもが町政等について町民として意見を表明する機会の保障に努めるものとします。

(少数の立場の子どもの意見の反映)

第26条 町は、障がいがあること、国籍の違い若しくは子どものおかれている状況の違い又は不登校であることによって、不当な不利益が生じないように、意見表明を保障することとします。

(文化、芸術、スポーツその他の諸活動への参加)

第27条 町は、文化、芸術、スポーツその他の諸活動へ子どもが参加出来るように、関係する団体の運営に関し支援し、会場の整備を行う等活動しやすい環境を保障するものとします。

第6章 子どもの権利侵害からの救済

(子どもの権利擁護委員の設置)

第28条 町は、子どもの権利侵害に関し救済の申立てを適切かつすみやかに処理するため、東員町子どもの権利擁護委員(以下「擁護委員」という。)を設置します。

2 擁護委員の数は、6人以内とし、人格に優れ、子どもの人権や教育等に関して知識や経験のある者のうちから、町長が任命し、又は委嘱します。

3 擁護委員の任期は3年とし、再任を妨げません。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。

(擁護委員の所掌事項)

第29条 擁護委員は、子どもの権利侵害についての相談又は救済の申立てを受けた場合は、必要に応じて事実の調査及び関係者間の調整を行うとともに、その解決に向けての助言や支援を行います。

2 擁護委員は、子どもの成長や人格形成に影響を及ぼすと認めるときに、子どもの権利を侵害した者に対して、勧告又は改善の要請を行うことができます。

3 擁護委員は、前項の規定による勧告又は改善の要請がすみやかに実施されるよう、町に対し必要な取組みを実施するよう要請することができます。

4 擁護委員は、毎年その活動の状況等を町長に報告し、公表するとともに、町に対し施策を提言することができます。

5 擁護委員は、保護者、学校関係者等及び地域住民等に協力を求めることができます。

(擁護委員に対する支援や協力)

第30条 町は、擁護委員の独立性を尊重し、その活動を支援します。

2 保護者、学校関係者等及び地域住民等は、擁護委員の業務に協力するよう努めなければなりません。

第7章 子どもの権利の保障状況の検証

(子どもの権利委員会)

第31条 子どもに関する施策の充実を図り、子どもの権利の保障を推進するため、第三者機関として東員町子どもの権利委員会(以下「権利委員会」という。)を設置します。

2 権利委員会は、町長及び教育委員会の諮問に応じて、町の子どもに関する施策における子どもの権利の保障の状況について調査し、及び審議します。

3 権利委員会の委員(以下この条において「委員」という。)は、10人以内で組織します。

4 委員は、人権、教育、福祉等の子どもの権利にかかわる分野において知識や経験のある者及び町民のうちから、町長が任命し、又は委嘱します。

5 委員の任期は3年とし、再任を妨げません。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。

6 委員のほか、特別の事項を調査し、及び審議させるため必要があるときは、権利委員会に臨時委員を置くことができます。

7 委員及び臨時委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはなりません。その職を退いた後も同様とします。

8 前各項に定めるもののほか、権利委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、町長が別に定めます。

(調査及び評価の結果の報告)

第32条 町長は、必要に応じて子どもの生活に関する意識、実態その他この条例に基づき町が行う施策の推進に必要な事項について調査し、その結果を公表するものとします。

2 町長は、前項の規定により権利委員会からの提示のあった事項について評価等を行い、その結果を権利委員会に報告します。

(答申に対する措置等)

第33条 町長及び教育委員会は、権利委員会からの答申を尊重し、必要な措置を講ずるものとします。

2 町長及び教育委員会は、前項の規定による必要な措置をした結果を公表するものとします。

第8章 雑則

(委任)

第34条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長及び教育委員会が別に定めます。

この条例は、平成27年6月19日から施行します。

みんなと一歩ずつ未来に向かっていく東員町子どもの権利条例

平成27年6月19日 条例第18号

(平成27年6月19日施行)

体系情報
第1編 規/第1章 町制施行
沿革情報
平成27年6月19日 条例第18号